これからの法改正の動き
成長投資を後押しする会社法改正の方向性についての報告書がまとまる
経済産業省は、日本企業の「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス改革の進め方、会社法改正の方向性等を検討するための研究会を立ち上げ、「会社法改正に関する報告書」をとりまとめました。
この報告書では、「企業経営・資本市場一体改革」の一環として、企業活動の基盤である会社法制の改正について、「価値創造ストーリー」を実行するための企業の選択肢の拡大や、企業と株主との対話の実質化・効率化に資する制度見直し等を早期に図ることを提言しています。
従業員等に対する株式の無償交付を可能に
価値創造ストーリーの実行・構築のための具体策として、次のような項目が挙げられています。
・株式を活用した人的投資の促進
取締役・執行役に加え、従業員や子会社の役職員に対しても株式の無償交付を可能にする。
・株式を活用したM&Aの促進
国内会社を子会社化する際に加え、外国会社を買収する等の場合も自社株式を対価とすることを可能にする。
・社債を活用した成長投資促進のための環境整備
社債権者集会のバーチャル化による機動的な開催を可能とする。
・経営者(取締役・執行役)の適切なリスクテイクの促進
社外取締役等に加え、経営者(取締役・執行役)も責任限定契約(任務懈怠行為を行なった場合に負う損害賠償責任の限度額を定めておく契約)を締結することを可能にする。
・機関設計の見直し
指名委員会等設置会社の指名・報酬の最終決定権限を、取締役の過半数を社外取締役が占める場合に限り、取締役会に帰属させる等。
これらの改正により、たとえば株式の無償交付の範囲拡大によって、上場会社の株式の流動性を活用した人的投資を促進し、従業員の企業価値や株価に対する意識を高める効果も期待できるとしています。
また、最適なコーポレートガバナンス体制に関係する機関設計の在り方や株主総会の在り方についても、一体的な論点としてさらなる検討が必要であると指摘しています。
この報告書を踏まえて、今後政府は会社法改正の検討を進めていく予定です。
注目したい法改正の動向
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取引適正化対策
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今後の取引適正化対策について、武藤容治経済産業大臣は閣議後記者会見で「協議に応じない価格決定」を新たに禁止する下請法改正を検討し、さらなる価格交渉、転嫁を促すことを表明しました。また、「下請」という呼称の変更については、「中小受託事業者」に改める方針が示されています。
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スポーツ基本法の改正
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スポーツ関係者が国や経済界等と連携して活動する日本スポーツ会議が、暴力、暴言、誹謗中傷の防止、eスポーツの推進等、スポーツ基本法の改正について提言しました。今期通常国会での改正を目指しています。
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フリーランスを安衛法の対象に
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労働政策審議会安全衛生分科会が報告書「今後の労働安全衛生対策について」をとりまとめました。
既存の労働災害防止対策に個人事業者等をも取り込み、自身や注文者等が講じるべき措置を実施することなどが「適当」であるとしています。高年齢労働者の労働災害を防止するため、必要な措置を講じることを事業者の努力義務とすることなども求めています。
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サイバー安全保障の強化
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有識者会議によるサイバー安全保障分野での対応力の向上に向けた提言を受け、政府がまとめた能動的サイバー防御を導入するサイバーセキュリティ法案を自民党の合同会議が了承しました。インフラの関連事業者と協定を結び、サイバー攻撃のおそれがないか監視するための通信情報取得を可能にすることなどが盛り込まれています。
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医薬品の安定供給
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医薬品医療機器等法の見直しに向けて、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会がとりまとめを行ないました。
医薬品製造販売業者に品質保証責任者の設置を義務づける等の品質確保・安全対策の強化や、安定供給確保に向けた体制整備などが図られます。
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック